みんな違ってみんないい
だからこそ魅力がある
わらもじとは、お米の稲藁を束ねた筆で書く書道のことです。筆の動かし方や力加減によって、藁の一本一本がまとまったり、はなれたりするため、独特のカスレを生み出します。
「自分の想いをカタチにすること」に集中して、トメはね、書き順のルールなどを気にせず、自分の思うがままに筆を走らせることを大切にするアート書道なので、子どもからお年寄りまで、誰でも自由に文字とのふれあいを楽しむことができます。
わらもじは、今から30年前、福島県の米農家で生まれ育った宗家の清水藁水氏が生み出し、発展させました。私たちが師匠のわらもじに出会ったのは、大阪芸術大学の学生だった頃でした。
私は当時日本画の制作が専門で、それまでの書に対するイメージといえば「綺麗に書かなくてはいけない」「トメハネ書き順をまちがってはいけない」というもので、書の作品はどこか馴染みの薄いものでした。
初めてわらもじを見た時、まず最初はわらもじを書く筆にびっくりしました。見たことがない形の筆ですが、素材は日本人なら誰でも馴染みのある稲。この筆で上手く字が書けるのかな?と最初は思いました。
わらもじの普及を目指す原動力は単に素材の面白さや目新しさからではありません。その最大の魅力は、既存の価値観にとらわれずに自分の感性を信じ向き合うことができることだと考えています。
米筆のしなりやカスレが手助けしてくれることによって、思いがけない表現として独特の線が生まれる一連の過程には、自己表現力や自己肯定感を高める力があると感じています。
私自身もわらもじに取り組む中で、面白い文字が書けるということが自分の特技として自信になりました。
尼崎 彩希
自分の「かっこいい!」「好き!」のままを自分の表現で形にすることで、自らの心に向き合い、心の動きや自身の個性、価値観を大切にすることができる。
そしてなにより、自分から生まれてきた作品を通して、創作の楽しさを感じて欲しい。
米筆とは、わらもじで用いる稲藁を束ねた筆です。
最大の特徴は藁の硬さを活かした躍動的なカスレです。
藁ごとに弾力・伸び・カスレに違いがあり、それぞれの個性があるため厳正な選定が欠かせません。一本一本の状態を見きわめて束ねた、最高の状態で墨を含ませることで、しなりのある独特の文字が現れます。